神奈川細雪その二十

「このたびは、第二回ミス明星グランプリにご応募頂き深く感謝申し上げます。厳正なる審査の結果、あなたは最終選考に推薦されました。つきましては、グランプリ選考日にお越し頂きたく、ご連絡いたします」


玉吉おじちゃんがこさえた小さなポストから葉書を拾い上げたのは、なにも知らない文子だ

「なんやの?これは」


「宛名は、千鶴子さまやわ」

「ちいちゃん
わけわからん、ハガキが届いてるわ」

「、、、、、、



人目見たとたん千鶴子は卒倒しそうになっている。

「文姉ちゃん、うち、うち・、、」

「顔が青いよ、なんやのん、グランプリて」

「うちがなあ、信じられへん、信じられへんよ」

「文姉ちゃん、うちなあ、明星のミスコンテストに応募したんや、駄目で元々って思うてな、それがな通ってしもうたんよ、信じられる?」

「、、、、、、」

「やっぱりなあ、審査員は見る目があるわ、最終選考は三十人よ、二千人の応募から選ばれたんよ、どないしよ?どないしよ?震えてしまって、」

「ちいちゃん落ち着きなはい、はい、お水、のんで、明星ってのは雑誌の事?」

「そうや、まずはお母ちゃんに知らせんと?探してくるけど、いつもの八百屋かな?」


セーラー服のリボンをヒラヒラさせて千鶴子が路地裏に消えた。しっかりと握りしめたハガキが微かに見えた。