神奈川細雪その二十三

顔が赤らむ思いがするが文子たち姉妹は「種違い」だった。男女の事に疎く、潔癖な文子は深く考えないようにしている。母が連れ添った二人の夫は結婚という、正式な結び付きだし、姉妹間になんのわだかまりもない。


「最初の富の亭主は、郵便配達だったんよ。富にはなんの落ち度もないのに、婚礼の夜からな戦争未亡人の家に行ってしまいよったんや、うかつやったわ、よう調べてから富を嫁に出すんやった」


「それが、秀子と文子の父ちゃんや、早い段階で兵隊にとられて、ほっとしたで、まあ帰ってきいへんのは気の毒やけど」


七十をとおに過ぎて益々みつの記憶力は冴える。


「次の亭主は、うちとこで働いてた大工の見習いや、目ぇがくりくりしとって可愛いぼんさんやったわ。こんだは間違いのないような男選んで、富にあてがった」

「それが登代子と千鶴子の父ちゃんやな」


「そうや、職人にしては珍しく酒も飲まん男やってんけど、」

「あっちゅうまに、兵隊にとられた、日本はなわてらが知らんうちに戦争始めてたんよ


「知らんて事は無いでしょう?開戦記念日も有るよ」